ニューヨークのレストラン食器事情

 

ここニューヨークで続く日本食人気。昨今のラーメン人気は言うまでもなく、ニューヨークで長年営業を続ける老舗レストランは息の長い商売を続け、日本の飲食店のニューヨーク出店、そして次々高級なお寿司屋がマンハッタンのいたるところにオープンしている。

日本食のレストランが増えれば、もちろんそれに伴い日本の食材やお酒はもちろんのこと、当然和食器、酒器等のニーズも増えていく。今後、ニューヨークのみならず、他州にも日本食人気は広がっていくと考えると継続的にアメリカ国内での日本の食器市場も大きくなっていくのではないだろうか。

では実際にレストランで、どのように食器選びが行われているのか。どこでどのように購入されるのか等、今後アメリカ市場を視野に入れている食器取り扱い企業には気になるところではないだろうか。

そこで、ニューヨークのレストラン業界で20年以上活躍され、数々のレストラン立ち上げにも携わられてきている、人気レストランSakaMai/サカマイ(157 Ludlow St, New York, NY 10002)のエグゼクティブシェフ、秋山剛徳(あきやまたかのり)氏に 食器選びについてお話を伺った。

秋山氏によると、食器選びの大まかな流れは 、レストラン全体のコンセプト、メニューコンセプトの決定、コンセプトを基に客単価の設定を行い、食器類等への予算組みをおこなう。

SakaMai/サカマイのように、席数も多いお店であれば、必要な食器の量も増えるので、一枚の予算も低めになる。また食洗機を用いて数多くの食器を一気に洗えば破損は免れない。破損による追加購入も視野に入れての商品選びとなる。メニューの変更や追加の場合、既存の食器で対応できない場合は、こちらも追加購入となる。

現在秋山氏が現在手掛けられているこの夏オープン予定の新店 は、席数も少なく、使用する食器の数も手洗いで対応できるので、食器選びの観点がSakaMai/サカマイとは異なる。食洗機には入れたくない単価の高いお皿や再入手不可能な骨董品等をとりいれ、それらが同氏のお料理をより一層引き立ててくれる。

ニューヨークで、日本の食器、調理道具等を入手する際、ほぼ手に入らないものはないとのこと 。 ただ、日本の食器取り扱う業者の数に限りがあるので、他店と同じ食器を使用することになり、お皿での差別化などできないのは事実。

今回2月に開催された国際見本市「NY NOW/ニューヨークナウ」でMIJP社が販売していた食器(東産工業 東峰窯)を6種オーダーされた秋山氏。購入理由は、他の在ニューヨークの業者が持ち合わせていない商品ということで、食器でも他店との差別化が可能となるということ。そして、 値段もそこまで高すぎずと、条件があったこと。お料理のプレゼンテーションに拘る秋山氏だからこそ、食器選びにはとても慎重なのだ。

料理の盛り付けに重要な役割を果たすお皿は、レストラン側もオリジナル性を出したいところではある。 日本人にとっては当たり前の、食器とお料理と盛り付けのバランスだが、ニューヨーカーもそれらにとても敏感になっている。その理由は、いわゆる「インスタ映え」する写真を撮影したいという人が急激に増えたからだ。ソーシャルメディアが店の集客に直結している今、料理を引き立てる お皿のニーズは増えていくだろう。

「日本から食材、食器等どんどんいいものが入って来て欲しいです。それらのニーズも増えると思います。」と語る秋山氏。日本食人気に伴い、日本のいいものが活躍できる場所がこれからも広がっていくことは、ニューヨークの飲食業界の最前線で活躍するシェフが言うのだから間違いないであろう。

エグゼクティブ・シェフ
秋山剛徳(あきやまたかのり)

宮崎県出身。1995年に渡米。ニューヨークで23年間飲食業界で活躍。1999年からイーストビレッジの人気レストラン「LAN」でエグゼクティブシェフを務める。和をよりニューヨーカーに受け入れてもらえるようにと創られた秋山氏の料理は、多くの美食家を虜にした。その後、コンサルティング業務にも従事。2013年にローワー・イーストサイドにオープンしたお料理と日本酒に拘る「SakaMai/サカマイ」のエグゼクティブシェフに就任。ニューヨーカーが求める日本食を常に最前線で提供している。

レストラン情報

SakaMai
(646) 590-0684
157 Ludlow St, New York, NY 10002
http://sakamai.com/ >>

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    工芸、デザイン界との幅広いネットワークを活かし、北米における日本製品の市場をリサーチ。アメリカにおけるクラフト事情から、2児の母として感じたアメリカライフなど掲載。

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    NY市場でのビジネス展開企業のサポートや、飲食業界に精通。飲食業界の展示会やイベント、新店舗や卸情報など、「食」を通してニューヨークのトレンド満載なコラムを掲載。

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    NY NOWなど日本企業の展示会出展支援を行いながら、みずから世界最大のアメリカ市場参入に奮闘する日々世界最大のアメリカ市場に挑む日々をコラム連載。

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