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History
伝平窯の歴史は古く、江戸時代後期にさかのぼります。有田焼の祖と言われる李参平が磁器の原料となる陶石を発見した泉山磁石場、そのふもとにある大公孫樹の下で伝平窯の歴史は始まりました。そうした歴史ある窯だけに料亭などからの信頼も厚く、当代がまだ大学生だった頃はまさに「頼まれればどんな器も創れる」工房として、人気を博していました。
しかし「どんな器も創れる」ことで、それぞれの窯の個性、ひいては有田らしさとは何かということが見失われていく。それが昭和の有田焼だったのかも知れません。そんな中「何でも創る」の時代はやがて終わると、当代は感じていました。「有田焼らしい有田焼とは?」
それは本来の技法に立ち返ることではないか? 伝平窯を継いだ当代は、有田の色とも言うべき藍の絵の具・呉須や釉薬を昔のものの美しさを引き出せるものに変え、有田焼の歴史の中で育まれてきた技術や伝統を受け継ぐと同時に、器の形や絵柄といった部分は逆に少し前衛的なくらいにユニークなデザインを取り入れていったのです。そこには「新しい商品を創り出して、有田焼ブームを自分が創る!」と若い意気込みがありました。
若いころ東京で学んだ経験のある当代は、シックな黒の魅力を肌で感じてきました。落ち着いた色でありながら、すべてを飲み込む奥の深さ、すべてをかき消す鋭さや強さを持つ、黒で新しい伝平窯のスターを創りたい。そのスターは日本のみならず、外国の人々にももてはやされる、ワールドワイドなスターに育てたい。そんな思いから、外国から来て有田焼を学んでいる友人のアドバイスを受けながら、「つたう」プロジェクトに出品する器を模索していきました。
まず目を惹くのはユーモラスな形。猪口の帽子を被ったような酒器は、今や世界の共通語となった「KAWAII」に通じるものがあります。ファンシーでもプリティーでもない、日本独自の「KAWAII」には、ユーモアがひそんでいます。それを手にするだけで楽しい気持ちになる、そんな形の器です。そしてそれを「KAWAII」で終わらせないのが、墨黒をメインにしたシックな色遣いです。墨黒の落ち着きの中に赤や金などの差し色を入れ、その華やぎとの対比でさらに黒の魅力を引き立てています。シックな色とユーモラスな形を両立させるのが、有田焼伝統の技術の力。400年の歴史が現代と出会い生まれた、それが伝平窯の「sumisome」なのです。
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Philosophy
「つたうプロジェクト」では、新しい商品やブランドをつくるだけでなく、それぞれに自分達のものづくりの歴史をたどり、その中で見えてきた個々の強みを再認識するとともに、自分達の誇れる「強み」をはっきり意識することで新たなステージに向かうエネルギーを得て、リブランディングに取り組みました。
ARITAの新しい未来に向けて、自分達つくり手や企業がどうあるべきかを 改めてじっくりと、そして真剣に考えました。そうして作成した新しい「企業理念」にこめられた、私達のものづくりへの「想い」を届けます。